事故物件と思っても、該当しないことが多い

 相談事例です。

相談内容

 ある不動産会社から、自分の家族が居住するためのファミリー向け中古区分マンションを購入しました。この物件の売主は不動産会社(宅地建物取引業者)です。

 この不動産会社はこの区分マンションを個人の売主から買い取り、所有権移転登記後にリノベーションを行い再販しました。私は、古い室内設備の多くが全て新品に交換されていることが気に入り、購入しました。

 ところが、引っ越しの当日にマンションの管理人からこの区分マンションの元の所有者が亡くなっていることを聞きました。転居した元の所有者と管理人とは親交があり、転居後も個人的なお付き合いをしていたとのことです。

 売主である不動産会社に「元の所有者が故人であれば事故物件であるに違いない。売買契約を取り消したい。」と要求したところ、「故人であることは全く知らなかった。遺族に死因を尋ねたところ病死であった。事故物件ではないので取り消しはできない。」と言われました。

 「納得できない。支払った物件代金および登記費用、ローン利用手数料、仲介手数料全額の返還を求める。」と主張したところ、「お断りします。ご不満であれば裁判を提起していただいて構いません。ただし、間違いなく貴殿が敗訴します。」と言われました。

 この物件は事故物件であると思うのですが、如何でしょうか。また、仲介した不動産会社に調査義務はないのでしょうか。私の家内が「事故物件に違いない。もうこのマンションには住みたくない。」と騒いでおり、困っています。

※プライバシーに配慮するため、事案を一部アレンジしています

 結論から申し上げると事故物件には該当しません。元の所有者は転居した上で物件を第三者(不動産会社)に売却し、所有権移転登記が行われました。不動産会社が所有権を取得した時点で元の所有者との関係は切れています。室内や敷地内における自殺、他殺等が原因で死亡した等の事情がなければ事故物件ではありません。

 仮に転居後の物件で自殺した場合は転居後の物件が事故物件になります。しかし、転居前に住んでいた物件は事故物件になりません。

 この事案における元の所有者は病死とのことであり、転居先の賃貸物件も事故物件には該当しません。事故物件であると思っても、事故物件に該当しないことが意外に多いです。

売主および仲介した不動産会社に告知義務があるか

 一般的に「事情を知っていれば契約しない可能性がある場合は、告知義務がある」と言えます。当該物件が事故物件である場合は、契約をためらう可能性が高いので告知義務があります。

 仲介した不動産会社から見た場合、亡くなられたのは売主(リフォームを行った不動産会社)に物件を売却した「以前の所有者」です。しかも死亡した場所は物件の内部でも敷地内でもありません。死因は病死です。

 どう考えても事故物件ではないので「事情を知っていれば契約しない可能性がある」とは言えません。しかも売主(リフォームを行った不動産会社)は以前の所有者が亡くなった事実を知らなかったので告知しようがありません。

 元の所有者と管理人とは親交があり、転居後も個人的な関係が続いていました。このために相談者は元の所有者が亡くなった事実を知ったに過ぎません。お亡くなりになった事実を知ることは、通常はないと思われます。

 さらに不動産が売却され、所有権移転登記後に引き渡されているので、元の所有者は当該不動産とは無関係です。

 以上の理由により、仲介した不動産会社および売主の不動産会社に調査義務はないと言えます。