建物にできた野鳥の巣、撤去して構わないか
賃貸マンションまたは賃貸アパートの住人から、野鳥の巣に関するクレームを受けたオーナー様がいらっしゃると思います。代表的な内容は、「マンションの屋上やバルコニーにツバメが巣を造った。雛の鳴き声がうるさく、フン害もあるので撤去してほしい。」というものです。
スズメバチやアシナガバチの巣であれば、撤去しても何ら問題ないと言えます。特にスズメバチは攻撃性が強く、人が近づくと毒針を刺すので極めて危険です。住宅に造られたスズメバチの巣の撤去は、多くの地方自治体が積極的に行っています。
しかし、野鳥の場合は要注意です。「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(いわゆる鳥獣保護法)」の第8条は、卵や雛がいる巣の撤去を原則として禁止しています。
(鳥獣の捕獲等及び鳥類の卵の採取等の禁止)
第八条 鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)を
してはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 次条第一項の許可を受けてその許可に係る捕獲等又は採取等をするとき。
二 第十一条第一項の規定により狩猟鳥獣の捕獲等をするとき。
三 第十三条第一項の規定により同項に規定する鳥獣又は鳥類の卵の捕獲等又は採取
等をするとき
この条文には但し書きがあります。鳥獣を保護する必要がある場合、または狩猟の対象とする場合は環境大臣または都道府県知事の許可を得ることにより捕獲や採取が認められています。
「雛の鳴き声がうるさい」とか「フン害が発生している」等の理由は、但し書きが規定する内容に該当しません。もちろん、許可を得られませんので、卵や雛がある巣を勝手に撤去した場合は一年以下の懲役または100万円以下の罰金刑に処せられます。
入居者から野鳥の巣に関するクレームが寄せられても、オーナー様や管理会社は安易に対応できないことになります。
また、野鳥を巣から追い出す目的で巣をつつく、親鳥を脅かす等の行為も処罰対象になります。第8条の「損傷」に該当すると解されるからです。
野鳥の巣を見つけ、どうしても撤去したい場合は卵を産む前に撤去することをお勧めします。卵が産まれた後に入居者からクレームを受け、巣の撤去を求められた場合は「巣の撤去は法律違反であり、罰則がある」旨を丁寧に説明するしかありません。
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