マイナス収支になる収益用不動産を買ってはいけない

 最近、特に若い方が賃貸用区分マンション(主にワンルームや1K)を購入し、収益用に運用しています。給与収入だけでは先行きが不安であるとして、収益用不動産の運営を副業として行うために購入される方がいらっしゃいます。

収益用不動産の運営による収入は、不労所得ではない

 副業として選ばれる理由ですが、勤めながら簡単に家賃収入を得られると錯覚していることにあると思われます。このブログでは過去に投稿していますが、決して不労所得ではありません。

 例えば家賃滞納や第三者への無断転貸、犯罪拠点として利用される等の事案が発生した場合、収益用不動産の運営を始めて行う方の大半は、対応方法がわからないと思われます。

 入居者と家賃保証会社との間に保証契約が締結されていれば滞納された家賃の代位弁済を受けられます。しかし、家賃を長期間滞納したまま居座り、退去を求めても一切応じない猛者がいます。また、入居者が行方不明になることがあります。

 これらの場合は明け渡しを求める民事裁判を提起し、判決を得た上で強制執行を実施してもらい、退去させることになります。裁判手続は弁護士が対応してくれますが、オーナー様はかなりの時間を割かれますし、相応の費用が発生します。

マイナス収支の収益用不動産 

 若い方が賃貸用区分マンションを購入する場合、勤務先の会社名を背景とした事業用ローンを利用して購入しています。多くの方が返済期間20~30年の長期ローンを利用しています。

 賃貸用区分マンションを購入した場合、管理費、修繕積立金、事業用ローンの返済額を毎月支払う必要があります。その他に固定資産税、都市計画税を毎年支払う必要があります。数多くある物件の中には毎月の支払額が家賃収入を上回る物件があります。これがいわゆる「マイナス収支」の物件です。

 不動産会社が勧める物件の中には「マイナス収支」であることがあらかじめ判明している物件があります。

 「マイナス収支の物件を購入しても大丈夫か」と尋ねると、「売却の際に高く売れるので大丈夫です」と言われることがあります。しかし、このように言われた場合は要注意です。多くの場合、このような物件を購入してはいけません。

 賃貸物件の入居者が退去すると、リフォーム代および次の入居者を募集するための仲介手数料が必要になります。空室期間が長引くと、その間の家賃収入を得られません。

 給湯器、水洗トイレ等の水回り設備、エアコン、コンロ等が故障した場合、修理または更新を行う必要があります。費用は所有者(オーナー様)負担になります。

 家賃滞納、入居者の行方不明、無断転貸はよく発生します。民事訴訟および強制執行が必要になればかなりの費用が発生します。

 持ち出しが毎月必要になるマイナス収支の物件においてこれらの事案が発生したら、多額の費用が発生して運営は間違いなく破綻します。

「売却の際に高く売れるので赤字は解消できます」は信用できない

 収益用不動産の売却価格は利回りで決まります。購入時の価格が高くても、売却価格に反映されて高く売れることはありません。また、建物の価値は古くなると次第に減少します。解体して再建築してもおかしくない程度に古くなると、買い手はなかなか見つかりません。

 マイナス収支の物件を売却する際は大幅に安く査定されます。このため、毎月発生した累積赤字を物件の売却で解消できることはまずありません。保有期間が長ければ長いほど、損失が次第に拡大すると言えます。

マイナス収支の物件を購入した場合

 赤字が膨らむことが続くのであれば、損切りをしてでも早期に売却するのが良い場合があります。なお、事業用ローンを利用している場合は物件の売却時に残債を一括で返済する必要があります。

 しかし、残念ながら売却代金だけで残債を返済できない場合があり、最終的に破産宣告を受ける方がいらっしゃいます。残債の返済方法について、金融機関とよく相談することが必要です。